エンド・オブ・バロル海外出版翻訳版について
「エンド・オブ・バロル」は出版先の一迅社管理の元、海外 出版の翻訳版が発行され、2024年1月現在は韓国語版(電子書籍のみ)の配信が確認されています。
2024年に新たに海外出版委託先より権利委託の告知がありました。
ここではロシア語翻訳版について許諾の経緯と著作権保持者である
作者の考えを記します。
許諾自体は大分前に出していました。
海外出版は基本的にオファー形式で、向こうの会社のリクエストを日本の出版社が受ける形で進みます。
オファーの連絡を出版社経由で受けた際、当然現在起きているロシアのウクライナ侵攻について懸念がありました。
戦争を止める手段として経済制裁という手段がかなり重要な中で、侵攻を進める国で出版を許可する、つまり経済に加わることは加害行為への加担になってしまうのではないかとかなり考えました。
アクション漫画というものを描いている以上、暴力行為は許されざるものであるという考えと表明だけは忘れてはなりません。
ただ「エンド・オブ・バロル」は、「他者から勝手に悪魔と判断された主人公が自由を剥奪されたことに対する怒り」を物語の中核にしています。私の筆致は拙いものではありますが、作中では主人公・菊池晴やその相棒のトリスタンをはじめ、個人にかかる他者からの強制や束縛などの暴力行為について許されないものとして描いています。読み手の好みは分かれど、それだけは曲解されないようにという理念のもと描きました。
現在のロシアでは出版物について検閲が厳しくなっています。
そんな国の中でもファンタジーの世界であればその思想が息出来て、国内で意思を持つ人に、避難先で母国語を求める人に、届く事があるなら、それには意味があるのではないかと思いました。そうあってほしい、そんな希望をもって許諾を出しました。
もちろん許諾を出しただけで、話が終わることもあります。
この時も長いこと動きがなかったので止まったと思っていました。
今回改めてリリース告知が出たこともあり、この文を認めています。
この後リリースが止まるかもしれない可能性は常にあります。
それでも出版された際には、手に取ってもらえたら嬉しいです。
ロシアを母国とする友人がいます。
会社に入った時初めて話しかけてくれた友人でした。帰りに本屋に寄って拙い英語でどの漫画が好きか話したあの楽しい時間を覚えています。
創作物は常にだれかを傷つけるものです。
しかし仕事としている以上、矛先についてより慎重に考えなければなりません。
創作物が現実に良い影響も悪い影響も与えることを自覚しておかなければなりません。
一迅社は版権管理先として許諾に関する手配を行ってくれましたが、文中に示した考えについては全て担当編集氏に共有した事はなく、ただ作者である私・空倉シキジ一個人の考えです。
これは国家への連帯を表明するものではありません。地球上で起きている加害行為全ての解消を願い被害者の味方であることを示すものです。
物語が誰かの楽しみや救いになれば嬉しいです。
あらゆる人が心穏やかに生きていけることを望みます。
2024.01.03 空倉シキジ